【チャンス到来?】持っている株がTOBされたらどうすれば良い?

株式公開買付け(TOB)は、企業の経営権取得などを目的としたM&A手法の一つであり、その発表は対象企業および買付企業の株価に劇的な影響を及ぼします。
TOBは株主にとって重要な情報であり、大きな利益を生む一方、損失を招くこともあるので、きちんと理解して戦略的にTOBに対応することが重要です。
今回は過去の事例を参考に、TOBが発生した際の投資戦略を分析していきます。

TOBの目的とメカニズム

株式公開買付け(TOB)とは、あらかじめ公表された買付価格、予定数、期間で条件に合意した株主から市場外で買い付けを行うことです。
TOBは基本的に企業の経営権取得を目的としています。株式の保有比率と影響の対応表を表1に示します。

保有比率権限主な影響
100%完全子会社化完全に支配している状態。
親会社の単独決定で経営支配と組織編制が可能。
66.7% (2/3超)特別決議を単独で可決可能定款変更・吸収合併・事業譲渡など会社法上の重要事項を単独で可決可能。
50%子会社化(過半数支配)普通決議を単独で可決できる。
事実上の経営支配。
33.4% (1/3超)拒否権の行使定款変更など特別決議を阻止することが可能。
20%関連会社(持分法適用)経営に重大な影響を及ぼすレベル。
5%大口保有報告義務大口保有者として開示義務が発生。
表1 株式の保有比率と影響

また、TOBには対象企業と買付者が事前に合意した上で進める「友好的TOB」と、対象企業に合意を得ずに進める「敵対的TOB」があります。これらはその性質によって、その後の株価の変動や市場の反応に異なる影響を与えることがあります。TOBの買付価格は、市場価格に対して20~40%のプレミアムが上乗せされることがよくあり、これも株価を変動させる大きな要因になります。

過去の事例と株価の変化

この章では過去に行われたTOBと、それによって株価がどのように変化したのかの事例を見ていきます。

①NTTによるNTTドコモの完全子会社化(2020年)
TOB対象会社:NTTドコモ
買付者:NTT
TOB発表前の終値:2,775円
TOB価格:3,900円(2020年9月29日発表)
結果と株価の動き:TOB成功。グループ会社間での友好的TOBで、NTTドコモの株価はTOB価格まで急騰後、横ばいで推移しました。

②日本産業パートナーズ(JIP)による東芝のTOB(2023年)
TOB対象会社:東芝
買付者:日本産業パートナーズ
TOB発表前の終値:4,039円
TOB価格:4,620円(2023年3月23日発表)
結果と株価の動き:TOB成功。誰もが知っている大企業の東芝ですが、TOB対象となり上場廃止となっています。TOBの経緯としては、2015年あたりから経営混乱が続いたためとなっています。TOB発表までの株価の動きを見ても、業績不振のため不安定な株価となっており、株主にとってはTOBに限らず取引しづらい状況であったと推測されます。

③産業革新投資機構(JIC)によるJSRのTOB(2023年)
TOB対象会社:JSR
買付者:産業革新投資機構
TOB発表前の終値:3,234円
TOB価格:4,350円(2023年6月26日発表)
結果と株価の動き:TOB成功。株価はTOB価格付近まで上昇後に安定しました。近年トレンドであった半導体関連企業でもあり、株価は大きく動いていました。TOBは株価が大きく下落していたタイミングでの発表でもあり、プレミアム率も高かったため、TOB直前で買っていた保有者にとっては大きな利益となったでしょう。

④伊藤忠商事によるデサントのTOB(2019年)
TOB対象会社:デサント
買付者:伊藤忠商事
TOB発表前の終値:1,871円
TOB価格:2,800円(2019年1月31日発表)
結果と株価の動き:TOB成功。敵対的TOBでした。過去から関係のあった両社は、関係が悪化し、株式保有率を約30%から40%に増やす目的で伊藤忠商事がTOBに踏み切ることになりました。TOB発表後はTOB価格付近まで株価が急騰しましたが、デサント側がTOBに対して反対姿勢を示したことにより2,500円付近で落ち着きました。
また、2024年に伊藤忠商事は再度デサントに対してTOBを行い、デサントは上場廃止となっています。

投資戦略とメリットデメリット

これまでの内容を踏まえて、TOBに対する最適な投資戦略を考えていきます。
戦略とメリットデメリットを表2にまとめました。

投資戦略状況メリットデメリット
TOBに応募TOBの成功確率が極めて高い場合(友好的TOBやグループ会社のTOB)。プレミアムが上乗せされた価格で確実に売却可能。
手数料がかからない。
不成立の場合、売却できない可能性。
TOB終了まで待つ必要がある。
TOB期間を待たずに市場で売却する利益確定を迅速に行いたい場合。迅速に現金化できる。
TOBが不成立になった場合の株価下落リスクを回避できる。
TOB価格よりも少し低い価格での売却となるのが一般的。
売買手数料が発生する。
株式を保有し続ける上場維持の場合やTOB不成立の可能性があり、長期的な成長が見込める場合。TOB不成立後も企業の将来性に期待できる場合、長期的な株価上昇の恩恵を受けられる。
上場維持の場合、継続的に株主としての権利を享受できる。
TOB不成立時に株価が急落する可能性が高い。
強制売却の可能性がある。
表2 TOBに対する投資戦略とメリットデメリット

上記の表から、TOBに対する最も合理的な戦略は「TOB発表後にTOB価格付近まで株価が上昇したら売却する」です。この方法であれば、TOBが失敗となった場合の株価急落リスクにも対応できます。
TOBが発表されると、ほとんどの場合がプレミアム価格に近づきますのでそのタイミングを狙いましょう。
また、TOBの情報を個人投資家が事前にキャッチすることはほぼ不可能ですので、TOB前に株価を仕込むことは不可能、TOB発表直後は株価が急騰するためこのわずかな時間で買うことも非常に難しいです。急騰後に一時的に株価が下がることもありますが、非常に難しい投資になりますので自信と時間がある方以外は買いから入ることはおすすめできません。

まとめ

今回はTOBと株価の関係性について分析してきました。
TOBには様々な性質があり、株式市場への影響も非常に大きいです。
TOB発表時はすぐに動いたほうが良い場合もありますので、事前に戦略を頭に入れておき、最適な投資を行いましょう。

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